
AI・半導体・宇宙・ドローンなど幅広い分野で社会発展と安全保障を同時に支える重要性が高まっている。そのような中で、デュアルユース技術は、輸出管理や倫理的配慮が求められつつも、日本成長戦略では官民連携による研究開発支援や産業基盤強化の柱として位置付けられ、防衛DXとも密接に連動しながら新たな技術エコシステム形成を促している。
●デュアルユースの定義と具体例
デュアルユース(dual-use)とは、民生用途と軍事用途の双方に利用できる技術・製品・データのことを指す。民間で日常的に使われる技術が、軍事や国家安全保障の目的に転用される可能性がある点が特徴で、逆に軍事技術が民生用途に応用されることもある。民生技術が軍事に応用される場合は「スピンオン」呼ばれる。デュアルユースの相互作用によって技術水準が向上してきたという経緯がある。
具体的には、通信技術や人工知能(AI)は、スマートフォンや工場の自動化など日常生活や産業で広く活用される。一方、軍事分野では情報分析や無人システムの制御などにも利用されている。また、GPS(全地球測位システム)は軍事目的で開発された後、現在ではカーナビやスマートフォンなど幅広い民生用途に普及している。ドローンや無人航走体は測量や物流などの民間利用だけではなく、偵察や戦闘支援にも応用されるほか、医療材料や半導体などの先端技術も民生・軍事の両分野で重要な役割を果たしており、デュアルユース技術の代表例として挙げられる。

●デュアルユース技術の適切な管理と活用
デュアルユース技術は、医療、情報通信、宇宙開発など幅広い分野で社会の発展に貢献する一方、軍事転用や悪用のリスクも伴う技術である。そのため、日本では外為法に基づき、特定の技術や製品の輸出を許可制または禁輸の対象として管理している。国際的には原子力供給国グループ(NSG)、オーストラリア・グループ、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)、ワッセナー・アレンジメントなどの枠組みにより、デュアルユース技術の輸出管理が行われている。研究者や企業は、公開情報の範囲を慎重に判断し、利用目的を明確化するとともに、適切な管理体制や倫理審査を整え、関連法令を遵守することが求められる。
デュアルユース技術は社会の発展に不可欠な技術である一方、その安全な活用には倫理的配慮と適切な管理が不可欠であり、技術革新と安全保障の両立を図ることが重要である。
●日本成長戦略におけるデュアルユースの位置付け
2026年に策定された日本成長戦略では、官民投資ロードマップの中でデュアルユース技術が重要分野として位置付けられ、経済成長と安全保障を一体的に推進する重要な柱とされている。
日本成長戦略では、民生と防衛の双方で活用できる先端技術を経済成長の原動力と捉え、AI、半導体、宇宙、ドローン、量子技術などの研究開発を官民で支援し、民間市場での競争力向上と安全保障の強化を同時に実現することを目指している。また、防衛分野で培われた技術を民間へ展開するとともに、民間の革新的な技術を防衛分野にも活用することで、新たな産業やスタートアップの育成、国内の技術基盤やサプライチェーンの強化を図るとしている。

●デュアルユースと防衛DXの関係
防衛DXとデュアルユースは、非常に密接な関係があり、両者は、技術開発・産業基盤・イノベーションの面で相互に補完している。
防衛DXでは、従来の兵器中心の技術だけでなく、民間で発展したデジタル技術を活用する。つまり、防衛DXは「防衛専用技術だけで進める」のではなく、民間で急速に進歩するデュアルユース技術を取り込むことで加速する。
従来、防衛技術は防衛企業が中心となって開発してきた。しかし現在は、AI企業、半導体企業、宇宙企業、スタートアップなど、防衛を主目的としていない企業の技術が安全保障に影響するようになってきている。防衛省も、AI・情報処理、サイバー、センシング、通信などの基盤技術を重視しており、民間技術の成長そのものが防衛力の基盤になり得る。

デュアルユースと防衛DXの関係は一方向ではなく、防衛DXがデュアルユース産業を育てる側面もあり、防衛分野で求められる課題から民生技術が発展するという流れもある。例えば、高信頼通信技術、厳しい環境で動作するセンサー、サイバー防御技術、自律制御技術といった技術は、防衛用途だけでなく、災害対応、インフラ管理、物流、自動運転などにも展開可能だ。
今後は「防衛企業だけが防衛技術を作る」という構造から、AI企業、大学、スタートアップ、通信・宇宙企業などを含む幅広い技術エコシステムによって防衛力を支える時代へ移行していくと考えられる。
【参考】
https://www.dlri.co.jp/report/ld/330450.html
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/defense_industry_wg/pdf/001_03_00.pdf
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/defense_industry_wg/pdf/002_01_00.pdf
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/pdf/rm2026.pdf
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/pdf/rm2026sankou.pdf


