日本のデジタル政府は、DGIで主要国最下位級となり、実装力との深刻な乖離が明らかになりました。韓国が国家主導のデータ・AI戦略で世界トップを確立する中、日本も縦割り構造を超え、官側が自ら設計・実装を担う体制へ転換する必要があります。

DGI 2023とEGDI 2024から見える構造的ギャップ

OECDが2023年版として公表したDigital Government Index(DGI 2023)では、日本は 33か国中31位でした。DGIとは、OECDが加盟国を中心に、政府のデジタル政策の整備状況を6つの次元で評価する指標で、政府のデジタル変革の基盤整備と成熟度を測るものです。前回2019年版の5位から大幅に順位を落とし、6つの評価項目すべてでOECD平均を下回り、特に「デジタル前提の政策設計」「データ駆動行政」「共通基盤(Government as a Platform)」といった制度・ガバナンス領域の弱さが際立ちました。これは、縦割り構造やアナログ規制、データ連携の遅れといった日本特有の課題が国際比較の中で可視化された結果と言えるでしょう。

一方、国連が2024年版として発表したE‑Government Development Index(EGDI 2024) では、日本は193か国中13位と高い順位を維持しました。EGDIとは国連(UN DESA)が各国のデジタル政府の発展度を比較評価するために作成している複合指標です。オンライン行政サービスの充実度を示すOSI、通信インフラの整備状況を示すTII、人材基盤を示すHCIのいずれも高水準で、特に光回線普及率や教育水準の高さが強みとなっています。また、住民参加の度合いを測るE‑Participation Indexでは世界2位となり、行政サービスの実装力やインフラ整備は国際的に見ても優れています。 この2つの指標から、日本のデジタル政府が「実装は強いが、制度が弱い」という大きなギャップを抱えていると言えます。オンラインサービスやインフラは世界トップクラスである一方、制度改革やデータ連携基盤、ガバナンス整備が追いつかず、行政全体をデジタル前提で再設計する段階に至っていません。2026年以降、ガバメントAI「源内」や行政API整備が本格化する中で、この制度的遅れをどこまで解消できるかが、日本の行政DXの成否を左右することになるでしょう。

日本のEGDI概要 2024年度版

出典:UN E-Government Knowledge base 「UN E-Government Survey 2024」

GDP比で見た日本のDGI・EGDIの位置づけ

DGI 2023では、日本は33か国中31位と主要先進国の中で突出して低くなっています。日本は世界3位のGDPを持つ経済大国であり、本来であればデジタル政策、データガバナンス、共通基盤整備に十分な投資が可能な立場にあります。しかし、韓国(1位)、英国(3位)、デンマーク(2位)、ノルウェー(4位)、オーストラリア(5位)といった主要先進国が上位を占める中、日本だけが制度・ガバナンス領域で大きく立ち遅れています。特にデジタル前提の制度設計やデータ連携基盤の整備が遅れており、GDP規模に対して制度の成熟度が極端に低くなっています。
一方、国連のEGDI 2024では、日本は193か国中13位と比較的高い順位に位置しています。オンライン行政サービス、通信インフラ、人材基盤はいずれも高水準で、実装力という観点では主要先進国と遜色ありません。ただし、GDP3位の国としてはトップ10入りしても不思議ではなく、韓国(3位)や米国(8位)と比較するとやや低いと言わざるを得ません。

韓国がDGIで1位、EGDIで3位を実現した理由とは

韓国がDGI2023で1位、EGDI2024で3位という世界最高水準の評価を得ている背景には、20年以上にわたる一貫したデジタル政府戦略があります。韓国は強力な中央ガバナンスを構築し、デジタル政策・投資・人材を政府全体で統合管理してきました。2022年には「デジタルプラットフォーム政府委員会」や「データ政策委員会」を設置し、国家レベルでデータ・デジタル政策を一元的に推進しています。この体制が、DGIが重視する制度・ガバナンス領域で突出した成果を生んでいます。
韓国は行政データの標準化・API化を徹底し、全省庁が共通データ基盤を利用する仕組みを整備しています。データ共有を前提とした行政運営は、データ駆動型行政を評価するDGIの中核項目で高く評価されています。また、AI活用を国家戦略の中心に据え、行政サービスの高度化やAIガバナンス整備を進めている点も特徴となっています。

さらに、韓国は行政サービスをAPI化し、民間サービスと連携する「プラットフォーム政府」を推進し、国民が一つのプラットフォームで行政サービスにアクセスできる環境を整え、先回り型サービスを実現しています。100万人規模のデジタル人材育成や世界最高水準のICTインフラ整備も実施しており、EGDIが評価するオンラインサービス・通信インフラ・人材基盤でも高得点を獲得しています。
これらの制度・データ・AI・人材・インフラを統合した国家戦略こそが、韓国をデジタル政府の世界トップに押し上げています。

日本が韓国型の成功を再現するには?

日本がデジタル化を加速するには、韓国との差を直視し、官側が主体的に手を動かす体制へ転換する必要があります。
韓国は行政内部にエンジニアやデータ専門職を多数抱え、要件定義や設計を官側が主導する一方、日本は依然としてベンダー丸投げ構造が強く残っています。まず、官側に実装能力を持つ専門職を大規模に採用し、プロダクトマネジメントを政府が握る体制が不可欠です。また、韓国が国家レベルでデータ標準化・API化を進めているのに対し、日本は省庁・自治体ごとに仕様が分断され、ベンダー依存を固定化しています。さらに、アジャイル調達や段階的契約など、官側が仕様と品質をコントロールできる調達制度への改革も必要です。
官側がコードやAPI仕様を理解し、デジタルを自ら扱える文化を築くことこそ、韓国型の成功に近づく鍵となるでしょう。